舞台上に「真実」は存在するのか?
ペーいちです。
舞台上に真実は存在するのでしょうか。
そもそも、演劇というものは、作り物であって、作品中に行われることは「絵空事」、つまりは、現実世界には起こりえない「嘘」だったりします
現実に起こりえないことや、過去に起こったとことに作家が脚色や解釈を加えたりして作られます。
さらに、演出家や俳優が解釈を加えていますので、「史実」や「現実」からは遠く離れてしまうことも多くあります。
しかし、そんな作品の中にも、舞台上の「真実」は確かに存在します。
では、舞台における「真実」とは、いったい何なのでしょう。
それは、俳優が「真に実感すること」なのです。
「真に実感すること」によって、舞台にリアリティをもたらします。
これがなければ、舞台はなんだか嘘くさくなってしまいます。
しかし、「真に実感すること」だけでは、なんだかわかりませんよね。
それでは、舞台上の「真実」について説明していきますね
観客の「追体験」「同時体験」
観客は演劇を見ている際は、演技者の体験を「追体験」もしくは「同時体験」しています。
この「体験」が、観客と共有できなければ、「なんかやってたけど、よくわからなかった」などと言われてしまいます。
しかし、「体験」を観客と共有することができれば、演技者自身だけではなく、観客にも「演劇的快感」を持ってもらうことができます。
演技をする上では、観客に、この「体験」をしてもらうことこそが、重要だと思います。
舞台上で起こった出来事は、セリフであれ、動作であれ、即座に観客に問い直され、検証されます。
つまり、演技者の演技に観客が同調して、同じく感じることで、舞台と客席にひとつの演劇体験が成立し、観客と演技者のそれぞれが快感を得ることができます。
これこそが最も原則的な演劇です。
演技者から伝えられる「なにものか」の内容に関係なく、演技者と「共有」したという体験が、演劇的感動を生むことになるのです。
つまり、舞台上の「真実」とはまさにここを拠り所として存在するのです。
演技者の体験
ではこの観客の「追体験」「同時体験」は何から生み出されるのでしょう。
たとえば、スポーツ観戦。
相撲をみていて、力士ががっぷり四つに組み合って、グーっと力がこもっているとき、テレビ越しであっても、見ているこっちも、無意識に力が入ったりしませんか。
ちゃぶ台なんかをグーっと持ったりなんかして、ひいきの力士が土俵際でうっちゃり、なんてことになったら、思わず自分もちゃぶ台をうっちゃってしまったり。
さすがにここまではないにしても、目の前で繰り広げられていることに引き込まれて、力が入ってしまうことがありますよね。
端的にいえば、これが観客の「追体験」「同時体験」なのです。
この例でいえば、今まさに目の前の二人の力士が、真剣に力をぶつけ合っています。
これが、力を入れているふりで、相撲を見せていたら、見ている側は、こんな風に力が入りますか。
入らないですよね。
力士から、力が入っているという実感が伝わるからこそ力が入るというものです。
実感とは「実際に感じていること」なんですよね。
演技でも同じことが言えます
俳優が、ここはこんな感じ、とか、心を動かさないまま、ただセリフをなぞっていたら、演技はとても嘘くさくなります。
また、俳優の、「俺かっこいい」という陶酔感や、「うまく見せてやろう」とかいう欲があると、観客はそれを敏感にとらえて、気持ちが作品から離れてしまいます。
また俳優が、自分の演技プランのみで、共演者のセリフの出し方や演技に呼応せず、やりたいように演じてしまっていても実感は生まれません。
「実感」とはなにから生まれるかと言えば、「体験」から生まれます。
私は役を演じる際に、「台本のすべてを完璧に覚えて、そしてすべてを忘れる」ということをモットーに演技をしています。
多くの演劇は、台本をもとに作られます。
俳優は、台本に書かれているセリフや段取り、シーンなどすべて覚えて舞台上に上がらなければなりません。
つまり、これから起こることがすべてわかっている状態で演技をするわけです。
舞台上での未来に何が起こると分かっているので、なんども稽古を重ねると慣れてしまって、演技がただ流れていくことになってしまうことになってしまいかねません。
役を演じる俳優は、これから起こることはすべて知っているわけですが、演じられる役の人物は、これから起こることは何も知らないのです。
これから自分に起こることも、何を思うかも、何をしゃべるのかも知らないわけです。
起こったことに対して、感じ、心が動いて、言葉を発するのです。
場所を感じ、空気を感じ、出来事を感じ、他者の言葉を感じること。
そして、それらのことに心が動かされる。
これこそが「体験」というものなのです。
そして、体験すること=実感するということになるのです。
しっかりと、見て、聞いて、触って、匂いを嗅いで、五感を総動員して感じてください。
そして、五感で感じ取ったことに心を動かしてください。
そうすることによって、舞台上に起こるすべてを体験してください。
そこに「真実」は生み出してみてください。
まとめ
「舞台上の真実」とは、俳優が役の人物として、「真に実感すること」です。
その実感は、俳優が役の人物として「体験」することによってのみ生まれ、観客はその「体験」と「同時体験」あるいは「追体験」し、その作品世界を俳優と観客双方で呼応し、「共有」することによって、「演劇的快感」を生み出すものとなります。
俳優として、ぜひともこの「真実」を手にして、「演劇的快感」を味わってほしいと思います。
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