気持ちと意味さえ伝われば、台本通りに言わなくてもいい?
違います!
ペーいちです。アマチュア演劇では、稽古場で演出家から必ずと言っていいほど、台本は一言一句違えずに言ってください、と指示が出ます。
また、稽古中にチェックする人を置いて、稽古後に指摘して直させるということもしばしば。
台本通りに言わなければならない理由としては
「言葉には言霊が宿っている 」「台本は楽譜と同じである」と言う2点。
それぞれに関して具体的に解説していきますね。
台本は、句読点も含め、一言一句違えずに言うのが原則です。
台本通りにセリフを言わない役者さんって、結構多いです。
単純に覚え間違えだったり、ニュアンスさえ合ってればOKでしょ、と考えていたり。
私も、演劇を始めたばかりのころは、言いにくい言葉や、普段自分が使わない言い回しや、語尾などを自分の言いやすいように勝手に言い換えてました。
普段自分が使わない言葉って覚えにくいんですよね。だから、セリフのニュアンスで覚えて、あとは意味が通じるようにやれば、なんとなく成立しているような気になれるんです。
だから、台本通り一言一句違えずに言ってください、なんて言われても、「なんで?意味が合ってるからいいじゃん」などと思ってました。
恥ずかしい限りです。若気の至りというやつです。
しかし、その理由をたずねても、「作者に対する敬意」としか説明されなくて、腑に落ちないままでした。
作家への敬意なら、この役をしっかり演じることで果たしている、くらいに考えていました。
では、なぜ台本通りに一言一句違えずに言わなければならないのかについて書いてきたいと思います。
理由として二つあります
一つ目は
言葉には語感というものがあり、人はその語感によって印象を受け取るから
言霊ってご存知ですか。
昔から言葉には力があって、言霊が宿るっていうあれです。
なんか迷信じみた話が出てきたな、と思われたかもしれませんが、スピリチュアルな話をするわけでありません。
迷信的な話ではなくて、五十音の一音一音にそれぞれ印象があるんです。
たとえば「あ」は、「ありのまま」「あす」「新たに」「あっけらかん」など、始まりをイメージさせる言葉や、作為のない自然な印象があります。
また、「あ」は口の奥まで大きく開けて、のどまで見せる潔いほどのさらし出し方をするので、ああけっぴろげで、人との距離を一気に縮める音だともいわれています。
こういう一音一音に対する印象があって、その印象が合わさって言葉になっていきます。
だから、言葉に霊的な力がある、ということよりも、言葉が持っている印象が言葉を発した人、その言葉を聞いた人に影響を与えるということです。
なので、私は言霊というう言い方をしています。
もちろん、台本を書いた作家さんも、意識、無意識にかかわらず、この印象によって言葉を選んで書いていらっしゃいます。
つまり語尾まで含めて、作家さんがその物語で表現したい世界のイメージが、言葉の印象によって描かれているということです。
例えば、マ行を多用すると甘えた口調になると言われています。甘えん坊のキャラクターを描こうと思ったら、マ行を多用したセリフになっていたりします。
余談になりますが、こういう語感による印象を理解すると、役を理解する上での指針にもなります
作家さんが描いた印象、世界というものが、言いにくいからとか、普段使わない言葉だからとか、覚えていないからという、俳優の努力不足とエゴによって損なわれてもいいと思いますか。
だめですよね。
これが、台本通りにしゃべらなければならない理由の一つ。
もう一つは、
台本は、音楽における楽譜と同じだから
舞台俳優を続けていくと、ミュージカルとか劇中歌で音楽に触れる機会もあると思います。
すでに音楽の勉強をしているかもしれませんが、
音楽をする上では楽譜って、原則として、その通りにしなければならないものですよね。
何人かで演奏するときに、楽譜通りに演奏するという約束があるから、オーケストラやアンサンブルは成立します。
弾きにくいから、歌いにくいから、勝手に音程を変えたり、リズムを変えたりしてはいけませんよね
また、音楽に触れたことのない人は分からないかもしれませんが、音程一つ取っても、ハーモニーの中の一つになるので、その音程が変わると、ハーモニーが変わってしまいます。
休符一つにも、意味を込められて作曲されています。
例えば八分休符であれば、一瞬のための後の爆発を意図していたりします。
有名なベートーベンの「運命」の最初のフレーズ、実はジャジャジャジャーンの前に八分休符が入っていることを知っていますか。
音に入る前の一瞬のタメを作ることで、出だしの印象をより強いものにしようという意図があると言われています。
楽譜にはその作曲家がどのように演奏してほしいかを詰め込まれています。
楽譜を無視しては、その曲の楽しさや美しさ、悲しさ、怒りなどを表現しきることなど到底できないのです
演劇もほかの俳優さんとのアンサンブルです。
アンサンブルとは調和のこと。調和を図る約束事として台本通りにやるべきなのです。
約束事として台本通りにセリフをしゃべること。
句読点は作家が意図してつけている場合が多いので、その意図をくみ取りながら、しっかり切ってしゃべることが大事になるわけです。
まとめ
楽譜と同じで、台本にはその作家さんが、その本と通じて表現してほしいものが詰め込まれています。
それを無視して、出演者がやりやすいようにやってはいけないと思うんです。
こっちのほうが感情表現しやすいから、だとか、意味が通じるんだから、舞台は成立するでしょ、とか。
それは、俳優の努力不足を棚に上げた行為だと思うんですよね。
役の感情や気持ち、考えなどを表現しようとすることはとても大事ですが、それをより完成度の高いものにするためにも
まずは、句読点も含めた一言一句違えずにセリフをしゃべることに取り組んでいただけたらと思います
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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