発声練習で差をつけよう~発声トレーニング②~変則50音~
発声練習してますか。
劇団などでは、稽古前にウォームアップの一環で発声練習を取り入れているところも多くあると思います。
しかし、漫然とただ声を出すだけになっていませんか。
気を付けることもわからずに、ただ声を出すだけでは、正確な発声・発音も、豊かな響きのある声も、セリフをコントロールする技術も、手に入れることはできません。
発声練習のたびに、なにに気を付けるか、課題を持って取り組むことで、正確な発声・発音、豊かな響きのある声、セリフをコントロールする力を手に入れましょう。
今回は、演劇を志す人なら、だれでも一度は触れたことがあるだろう「変則50音」のテキストを用いて、進めていきます
テキストは下記のリンクからPDFファイルをダウンロードして、プリントアウトするなどして用いてください。
前回からしばらく続ける発声トレーニングの内容は、無料で教えるのはもったいないほどの内容だと自負しているので、そのうち非公開にしようと思っています。
ぜひとも、今のうちに覚えて実践していただきたいです。
変則50音①の進め方
次記事のテキストの「変則50音①から進めていきましょう。
姿勢
まず、前回の記事で紹介した良い姿勢で立ちましょう。
重心に注意します。
重心が上がってしまうと声が上ずって聞こえてしまいます。
重心の位置として、一般に「丹田」と呼ばれる場所、へそから握りこぶし一個分くらいしたを意識します。
呼吸
腹式呼吸でしっかり支えのある息で発声していきます。
息を吸うときに、口で吸うと重心が上がってしまい支えが取りづらくなりますので、鼻から息を吸うようにしましょう。
息を吸ったら、声を出す前に、一度息を止めて、息を支える準備をします。
声楽などではこれを「セット」すると言います。
息を吸ってそのまますぐに声を出すと、支えが取れないので、気を付けてください。
発声
姿勢を正して、息を吸ったらいよいよ発声です。
「ア、エ、イ、ウ、エ、オ、ア、オ」と一音ずつ確実に発音していきましょう
発声する際に、特に気を付けなければならないことが5つあります。
- 口の形を準備してから声を出す。
- 二重母音にならないように注意する
- 息のベクトルを一定にする
- 促音が入らないように注意する
- 「ウ」母音を前に出すようにする
それでは、それぞれについて説明していきますね。
口の形を準備してから声を出す
口の形が準備できないままに発音すると、口を動かしながら発音することになってしまうので、「ア」が「ゥア」、「エ」が「ゥエ」となってしまったり、「カ」が「クゥア」となってしまったりします。
発音する前に、口の形を準備してから声を出すことで、音がクリアに出るようになります。
二重母音にならないよう注意する
確実に発音しようとするあまり、母音を押しすぎてしまい「アァ」、「イィ」となってしまったり、「カァ」「ケェ」となってしまうことがあります。
聞いてて聞き苦しくなってしまいます
母音を押しすぎないよう気を付けましょう。
息のベクトルを一定にする
息のベクトル、つまり出す方向と量を一定にすることで、発音した音が安定します。
ベクトルが変わると、響きが変わってしまったりするので、一定にできるようコントロールしていきましょう。
促音が入らないようにする
促音とはちいさい「っ」のことです。
「あっ、えっ、いっ、うっ、えぅ、おっ、あっ、おっ」とならないように気を付けてください。
音を切るときにのどを締めて切ると促音が入ってしまいます。
促音が入ると、息の流れが止まってしまうばかりか、息のベクトルも変わってしまうので、発音が安定しなくなります。
「ウ」母音を前に出すようにする
「ウ」の母音は、同じように出しているつもりでも、ほかの母音と比べると、引っ込んで聞こえます。なので、セリフなどで聞いた時に、音の粒が揃いにくくなるので、自分が思っているよりも、少し前に出して発音するようにしてください。
ただし、二重母音にはならないように注意が必要です。
これらの5つに気を付けて「変則50音①」を続ければ、とりあえずは発音は整っていきます。
他にも、カ行のとき、サ行のときなど、それぞれの行によって気を付けることはありますが、まずはこの5つに取り組んでみてください。
変則50音②の進め方
続いてテキストの変則50音②を進めていきます。
姿勢や呼吸に関しては前項の変則50音①と同じです
こちらは1段をひと息で言います。
声を出すときの注意点としては
- 息の出す量とベクトルを一定にする
- レガートに発声する
- 母音の響きの上に子音を乗せるように発音する
以上の3点です。
それでは、それぞれについて説明をしていきますね
息を出す量を一定にする
レガートに発声する
「レガート」ってなんのこっちゃ、と思われたかもしれませんね。
「レガート」の反対は「スタッカート」。
音楽用語です
スタッカートは分かりますよね。小さく切って発音することです。
スタッカートで発声をすると、息の流れが止まってしまいますし、息のベクトルも変わりやすくなってしまいます。
レガートはその反対で、滑らかにつなげて発音するということです。
母音の響きの上に子音を乗せるように発音する
日本語では、母音と子音が組み合わさって一つの音になります。
母音の響きが充実していないと、その上に子音を乗せても、なにを言っているのかわからなくなってしまいます。
また母音を響かせることができていないと、セリフをしゃべるときに音が「転ぶ」ということになって、セリフにリズムを崩してしまったり、早口に聞こえてしまって、観客が聞き取れないということも引き起こしてしまいます。
母音をしっかり鳴らすことを意識して取り組んでください。
母音の響きが、感情を表現するともいわれています。
母音がしっかり響くと、それだけ観客に伝えたい感情などもしっかり届くというものです。
拗音の進め方
最後に、次記事テキスト「拗音」について進めていきましょう。
進め方としては「変則50音①」と同じです。
拗音である「きゃ」などは一つの音の中に、2つの母音が組み合わさって一つの音になっています。
二つの響きで出してしまうと、とてももたついた印象を与えてしまうので、一つの響きの中に収めて発音していきます。
「きゃ」は「kya」であって「kiya」とならないように意識をしながら発声してください。
そのほかの気を付けるところは、「変則50音①」と同様です。
発声練習では、漫然と声を出しているだけでは全く意味がありません。
今回紹介したことを意識しながら取り組んでみてください。
なかなか一朝一夕にはうまくはなりませんが、課題意識をしっかり持って、継続的に取り組むことで、必ず大きな成果を生むのが基礎基本です。
基礎基本だから、はっきり言って地味ですし、決して面白いことではありませんから、おざなりにしてしまう劇団も多いです。
しかし、言葉がちゃんと伝わってこない、なに言ってるかわかんない、そんなお芝居を観たいですか。
そんなも観せたいですか。
観たくないし、観せたくないはずです。
必ず演技の上達につながりますので、信じて取り組んでください。
まとめ
何度も言いますが、発声・発音練習は漫然とやっているだけでは、やるだけ無駄というものです。
しかし、一回一回課題意識をもって取り組めば、必ず上達します。
今回紹介した「気を付けるべきこと」はほんの一部ですが、これらを意識して取り組むだけで、普段の発声練習は意味のあるものに変わっていきます。
豊かで艶のある響きを持った声は、ただそれだけで俳優として大きな魅力となります